【相続】遺産分割で不動産が多く預金が少ない場合にどのように対処することになりますか。

不動産が多く、預金が少ない場合の相続はのように対処することになりますか。

遺産における不動産の占める割合が多く、預金が少ないというケースは良く見受けられます。

遺言がなく、子である相続人が複数ある場合には、均等に遺産分割することが原則となりますので、不動産を含めた遺産を何らかの形で均等に遺産分割する必要がでてきます。

遺産分割をする場合に、取ることができる「現物分割」「代償分割」「換価分割」という3つの方法を解説します。

もっとも単純な解決方法である現物分割

遺産を物理的に分割する方法を「現物分割」といいます。

複数の不動産をそれぞれの相続人に分け、現預金で調整するというスタンダートな方法も「現物分割」の一種です。

一方で、1筆の大きな不動産がある等、そのままでは均等に分けることができない遺産の場合には、1筆の不動産を分筆して、それぞれの相続人が相続するということもあります。特に、1筆の不動産が広く、道路に面した有効活用可能な複数の不動産に分筆することが可能である場合には有効な解決方法といえます。

不動産を分筆するケースでは、事前に土地家屋調査士とよく相談し、測量、境界杭の設置等を行い、登記を行う必要があります。

また、公平に遺産分割するために、分筆後の不動産の価値(不動産を巡る法規制等の問題を含む)を把握する必要から、不動産鑑定士にも相談することも一般的です。

代償金で精算する代償分割

実務上頻繁に使用される方法で、遺産を相続人の一人が取得し、他の相続人が代償金を受け取るという方法です。

遺産から代償金を支払うことができれば理想的ではありますが、遺産からの支払いが困難な場合には、相続人の個人資産から代償金の支出をする場合もあります。

裁判で遺産分割の方法を決める「審判」手続きでは、相続人全員が代償分割によることの合意ができている場合や特定の相続人の利用を保護する必要がある場合で、かつ相続人の一人に代償金の支払い能力がある場合に採用されます(家事事件手続法195条「特別の事情」)。

代償金の支払能力が必要であることは、最高裁判例があり(最高裁平成12年9月7日判決)、代償金を支払う予定の相続人が通帳の写しなどを提出をすることにより、支払能力を証明することが一般的です。

ただし、実務上、審判でも、現物分割と並んで、比較的柔軟に採用されているといわれています。

遺産を売却し、現金を分ける換価分割

不動産や金融商品等換価可能な財産がある場合に、売却し金銭に換えて、相続人で分配する方法を換価分割といいます。

例えば、相続人が全員の合意で、共同で不動産を売却して、諸経費を除いた金銭を相続分に応じて分割するという方法が換価分割です。

一方で、裁判で遺産分割を決める「審判」においても、換価分割が命じられる場合もあります。

例えば、複数人が不動産の取得を希望し、特定の相続人の利用を保護する必要がない場合や、誰も不動産の取得を希望しなかった場合に、裁判所が換価分割の審判をすることも考えられます。

換価分割では、形式競売という競売手続きを経て、諸経費を控除した部分が相続人に配当されることになります。

ただし、形式競売には、重大なリスクがあります。まず、審判をした家庭裁判所が競売を進行するわけではなく、実際には申立人が予納金を支払い、競売の申立をする必要があり、特定の相続人が費用の立替をする必要が出てきます。競売の予納金は、名古屋地方裁判所では、最低額が60万円とされており(令和6年6月現在)、仮に競売で購入する者が現れなかった場合には、申立人の自己負担となります。

また、競売において、売却ができたとしても、競売の場合には価格が実勢の相場に届かないことが多く、相続人の取得額は低額となりがちです。

したがって、相続人全員の合意による任意売却を利用した換価分割は多いですが、相続人は形式競売による遺産分割を避ける傾向にあります。

現預金が少ない場合の遺産分割は代償分割が多いです。

これまで3つの分割方法をご説明しましたが、遺産に占める不動産の割合が多く、預金が少ない場合の遺産分割は圧倒的に「代償分割」で解決するケースが多いです。

ときには、個人資産を使用した代償分割が必須のケースもありますので、両親の財産の不動産の割合が多い方は、生前から貯蓄に勤め、代償金を用意する方もいらっしゃいます。

それでも解決不能の場合には、不動産を相続人全員で任意売却し換価分割をしたり、1筆の不動産を分筆をする現物分割を検討することになります。

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地域柄、不動産オーナーの相続が多く、預金が少ない遺産分割の相談件数は多いです。

様々な遺産分割の方法がありますので、不動産が多く、預金が少ないからとあきらめることなく、ご相談いただければと思います。

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