【相続】遺留分減殺請求とは何ですか(2019年7月1日施行相続法改正対応)。

配偶者、子、直系尊属には最低限の取り分である遺留分が存在します

遺言により相続分がないとされた場合、著しく低い割合とされた場合、他の共同相続人に対する生前贈与によって相続すべき遺産がなかった場合などには、遺留分減殺請求をすることで最低限の取り分(遺留分)を確保することができる場合があります。

遺留分は、相続人の生活保障及び遺産形成への潜在的貢献に対する精算のために民法第1028条で定められています。

直系尊属のみが相続人の場合は相続分の3分の1、それ以外のケースでは2分の1が遺留分となります。例えば、配偶者と子2人が相続人であった場合には、子1人あたりの相続分が4分の1ですので、その2分の1の8分の1が遺留分割合となります。なお、兄弟姉妹は、配偶者、子、直系親族がいない場合には相続人となりますが、遺留分はありません。

遺留分侵害額の算定方法は少々複雑です(2段階あります)

第1段階:遺留分の算定するための財産の価格の算出と遺留分額(相続法改正あり

まず初めに、遺留分権利者の「遺留分額」がいくらかを計算する方法をご紹介します。簡単に申しますと、「遺留分の算定するための財産の価格」(民法第1043条第1項)×「遺留分権利者の遺留分割合」で、その遺留分権利者の「遺留分額」が計算されます。

「遺留分の算定するための財産の価格」(民法第1043条第1項)は、「被相続人が相続開始時に有していた財産の価格+贈与財産の価格-相続債務の全額」という計算により算出します。

このうち「贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限りその価格を算入する」(民法1044条第1項)とされ、「相続人に対する贈与」に関しては「10年間にしたものに限り、」「その価格(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価格に限る)を算入する」(民法1044条第3項)とされています。

また、「当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与したときは、1年前の日より前にしたものについても同様とする」(民法1044条第1項)とされています

問題になるのは、ほぼ相続人に対する贈与ですので、その点を簡単にまとめますと、相続人の受けた贈与のうち特別受益に該当するものは10年間以内に受けた贈与に限り、その価格を「遺留分の算定するための財産の価格」に算入する。ただし、被相続人と特別受益に該当する贈与を受けた相続人が、遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与したときは、10年間以内に関わらず、算入するということとなります。

なお、被相続人から特別受益に関して、将来の相続において相続財産に持ち戻さなくてよい(持ち戻しの免除の意思表示)とされることがあり、遺産分割をする上で具体的相続分の計算においては、持ち戻し免除の意思表示は有効とされています。しかし、遺留分の計算においては、持ち戻し免除の意思表示の有無にかかわらず、「贈与財産の価格」として算定されることになります。

第2段階:遺留分侵害額の計算

次に、遺留分侵害額の計算をする必要があります。つまり、仮に遺留分額を計算したとしても、遺留分権利者が実際に贈与や遺言などにより、被相続人の財産を受け取っている場合にはそれを控除しなければなりません。

「遺留分侵害額」は、「先ほど算出した遺留分権利者の遺留分額-遺留分権利者が相続によって得た財産額+相続債務分担額-被相続人が贈与を受けた金額のうち特別受益額に該当する金額」を計算して算出します。

「遺留分権利者が相続によって得た財産額」は、例えば、遺言外の財産が存在した場合や遺言によって財産を得た場合にこれを控除するということになります。

「遺留分侵害額」を計算方法に関しては、相続法改正において特に新しく規定されませんでした。従いまして、従前の計算方法(最高裁平成8年11月26日)が生きているものと考えられ、「遺留分侵害額」を計算する上では、特別受益は10年間に限定されないと考えたほうがよさそうです。

遺留分侵害額は計算できました。では、誰にいくら請求できるのでしょうか。(相続法改正あり

まず、遺留分減殺請求権の効果が変わりました

遺留分減殺請求の効果が「原則:現物返還 例外:価格弁償」から「遺留分侵害額の請求」への改正されました。

現行法では、遺留分減殺請求権を行使した場合には、遺留分を侵害する遺言や贈与等の効力が消滅し、その権利が直接的に遺留分権利者に復帰する(移転する)という考え方を取っていました(物権説、形成権)。

そのため、紛争が激しく、調停等で決着ができない事案では、遺産である不動産は共有状態になり、共有状態となった不動産は共有物分割訴訟等の煩雑な手続きが必要となる事態が生じてきました。

また、実務的には、遺留分減殺請求においては価格弁償の方法により解決することが多く、物権的効力を認める必要性に関して疑問視されていました。

そこで、今回の相続法改正において、「遺留分権利者が受贈者に対して遺留分減殺請求を遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求する権利」としました。

この結果、遺産に株式が含まれる事業承継事案では、遺留分減殺の効果によって株式の共有状態とならないことになり、スムーズな事業承継が実現されることになりました。

具体的に誰にいくら「遺留分侵害額の請求」ができますか。

現行法と同様に相続法改正でも、遺留分侵害額を負担する順位が定められました(民法第1047条第1項)。

①受遺者と受贈者があるときは、受遺者が先に負担する、②受遺者が複数あるとき又は受贈者が服するある場合においてその贈与が同時にされたときには受遺者又は受贈者がその目的の割合に応じて負担する。③受贈者が複数あるときは、後の贈与を受けたもから順次贈与にかかる受贈者が負担するとされています。

なお、相続させる遺言を受けた者は、受遺者に該当します(民法第1047条第1項の遺贈の括弧書)。

例えば、子4人が相続人の場合で、相続財産が1200万円で、長男、次男、三男に400万円ずつ相続させる遺言があった場合(負債や特別受益はなし)には、四男は他の兄弟に対してそれぞれ50万円の「遺留分侵害額の請求」をすることができることとなります。

遺留分減殺請求の行使方法と時効

遺留分減殺請求権は、裁判上裁判外に関わらず、意思表示によって行使することになりますが、時効の関係上、意思表示が明確となるように、内容証明郵便などの客観的に証明が可能な方法で行使することが通常です。

遺留分減殺請求は、遺産の受遺者又は受贈者に対してすることになります。包括遺贈が未履行の場合には、遺言執行者に対しても遺留分減殺請求ができるという昭和初期の判例がありますが、その射程範囲には見解の争いがありますので、受遺者又は受贈者に対してするのが無難です。

遺留分減殺請求は、「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする」とされ、時効・除斥期間が設定されており、時効期間が短いですので、注意が必要です。

改正民法第1046条(遺留分侵害額の請求)

1 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。

 ① 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額

 ② 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

 ③ 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

改正民法第1043条

1 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。

2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。

改正民法第1044条

1 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。

3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

改正民法第1046条(遺留分侵害額の請求)

1 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。

 ① 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額

 ② 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

 ③ 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

改正民法第1047条(受遺者又は受贈者の負担額)

1 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。

 ① 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。

 ② 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 ③ 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。

2 第九百四条、第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。

3 前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。

4 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。

5 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

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