【交通事故】令和2年4月の民法(債権法)改正で交通事故の損害賠償額は変わります。
令和2年4月1日より改正民法が施行されます。
令和2年4月1日施行の民法改正は債権法の相当部分に影響が及ぶ歴史的な大改正となりました。
改正の中で、法定利息、消滅時効の変更もされており、交通事故の事件処理においても、影響が生じることになります。
以下、債権法改正での、交通事故の損害賠償に関する変化に関して、ご説明します。
人身事故の後遺障害逸失利益、死亡逸失利益、将来介護費用の金額が増額されます
将来発生するべき損害は、交通事故の損害算定上、「中間利息控除」をして算定してます。
中間利息控除とは、将来受け取るべき金銭を現在支払いをしてもらう際に、将来受け取るまでに発生するはずの利息を支払額から控除する方法をいいます。将来受け取るべき債権の「現在価値」を算出する方法です。
改正前民法では、法定利息が年利5%でしたので、5%を1年間の利息として計算していました。
改正民法では、将来取得すべき利益(逸失利益)や将来において負担すべき費用(将来介護費用など)については、法定利息で中間利息控除をすることを明文化し(民法417条の2、民法722条第1項)、法定利息が3%と定められました(民法404条第2項)。
これに沿って、計算した一例を示します。
例えば、むち打ちで14級9号が認定された場合、5年間5%の逸失利益が生じたと認定されることがあります。後遺障害逸失利益は、年収500万円の場合には、改正前は108万2375円でしたが、改正後は114万4925円と金額が上昇しました。控除する利息が減るわけですから、当然逸失利益は上昇するという結論になります。
なお、改正法では、中間利息控除は「その損害賠償の請求権が生じた時点」での法定利息を使用するということとされました。
「その損害賠償の請求権が生じた時点」に関しては、後遺障害に関する損害に関しては症状固定時点、死亡事故に関しては死亡時とするのが多数説ですので、令和2年4月1日に症状固定(死亡)となったかどうかが算定金額の分かれ目となると考えられます。
改正民法第404条(法定利率)
1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年3パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 法前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。
改正民法第417条の2(中間利息の控除)
1 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。
改正民法第722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
1 第417条及び第417条の2の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
人身事故の損害賠償請求権の消滅時効が3年から5年となります。
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については、消滅時効が5年となりました(民法724条の2)。
したがって、物損事故に関しては3年、人身事故に関しては5年となりました。
また、改正民法施行の日である令和2年4月1日経過時点で、未完成の時効期間は延長されることとなりましたので注意が必要です。
なお、自賠責法に基づく被害者請求(16条請求)や無保険車事故に関する政府補償事業の請求の時効に関しては、3年のままです
改正民法724条の2(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
改正民法附則35条(不法行為等に関する経過措置)
1 旧法第724条後段(旧法第九934条第3項(旧法第936条第3項、第947条第3項、第950条第2項及び第957条第2項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)に規定する期間がこの法律の施行の際既に経過していた場合におけるその期間の制限については、なお従前の例による。
2 新法第724条の2の規定は、不法行為による損害賠償請求権の旧法第724条前段に規定する時効がこの法律の施行の際既に完成していた場合については、適用しない。
愛知県弁護士会所属
愛知県半田市で相続・離婚・交通事故・債務整理・中小企業法務を主な業務内容として、知多半島地域を中心に弁護士活動を行っております。
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