【相続】相続人の一人の行方が分かりません。遺産分割はできないのでしょうか。

遺産分割協議には相続人全員の合意が必要です。

遺産分割協議は、相続人の全員が合意する必要があり、一人でも欠けた場合には無効となります。

したがって、相続人の一人が行方不明であった場合には、その人物を探し出すか、その人物に代わり遺産分割をすることができる権限を有する人物をがあります。

具体的には、①不在者管理人制度を利用する場合と、②失踪宣告を利用する場合の2つの方法があります。

不在者財産管理人制度の利用する方法

民法第28条で「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。」とされています。

不在者財産管理人は同条に基づき裁判所から選任され、通常は弁護士等有資格者が選任されることになります。

不在者財産管理人は、裁判所の権限外の行為に関する許可を受けることにより、遺産分割協議を不在者に代わり成立させることができます。

ただし、裁判所は不在者に不利な遺産分割協議が行われないように、合理的な理由がない限り、不在者が法定相続分相当額を取得できないような遺産分割協議に許可をしないとされています。

申立てにあたっては、不在者が不在である事実や経緯、不在者の財産や負債等の資料を裁判所に提出しなければならず、予納金(数十万円~とされており、財産状況によって大幅に異なる)を支払わなければなりません。

失踪宣告を利用する方法

民法第30条第1項で「不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。」と規定されています。

そして、民法第31条において「前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に」「死亡したものとみなす。」とされています。

つまり、生死が7年間不明であった場合には、失踪宣告を申し立てることで、生死が不明となってから7年間が経過した時点で、法律上「死亡」したものとみなされることになります(戦争、船舶の沈没、震災などの危難の場合には期間が1年となります)。死亡されたとみなされるのは、失踪宣告が確定した日ではなく、7年間の経過した時点となりますので、注意が必要です(失踪宣告の法的効果として相続人が変動する可能性があります)。

失踪宣告の申立てには、失踪を証明する事実(行方不明者届、親族の陳述書)等を提出する必要があります。申立てがあると、裁判所は、調査官による調査、官報の公告を行うため、失踪宣告までには1年程度かかるとされています。

行方不明の人に子がいる場合には、失踪宣告により子が相続人ないし代襲相続人となり、遺産分割協議を成立させることになります。

将来相続人となるものに行方不明者がいる場合には遺言を作成しておくという予防策もあります

将来相続人となる人に行方不明の人がいる場合には、遺言を作成して、他の相続人に相続させるという予防策が存在します。

なお、行方不明者の生存が明らかになった場合や行方不明者が失踪宣告を受け代襲相続人が生じた場合には、遺留分減殺請求の余地が残ります。

ただし、遺留分減殺請求権には時効があります。民法第1042条に「減殺の請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは,時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも,同様とする。」とあるので、行方不明者の生存が判明したとしても、行方不明者が相続人となっている相続の開始から10年経過後は遺留分減殺請求を行使することはできません。