【不動産】自宅を新築しましたが、引渡し後に雨漏りが見つかりました。施工業者にどのような請求ができますか。【民法改正】

自宅を新築しましたが、引渡し後に雨漏りが見つかりました。施工業者にどのような請求ができますか。

自宅を新築し、引渡しを受けました。しばらくは問題ありませんでしたが、雨の日に雨漏りがするようになりました。

請負人(ハウスメーカー等)にどのような請求ができますか。

以下、債権法改正後の民法を前提に説明します。

契約内容不適合責任として①追完請求(修補請求)、②代金減額請求をするという方法があります。

雨天の日に、雨漏りが発生する場合には、「請負人が品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき」(民法562条1項、民法559条)に該当しますから、目的物の修補による履行の「①追完請求」をすることができます。

つまり、注文者は、請負人(ハウスメーカー等)に対して、雨漏りを修補する工事をするよう請求することができます。

また、注文者が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときには、その不適合の程度に応じて「②代金の減額」を請求することができます(民法563条1項、民法559条)。

債務不履行責任として③損害賠償請求、④解除の請求はできるのでしょうか。

次に、民法第564条(民法559条)により、①追完請求、②代金減額請求の規定は、③損害賠償請求(民法415条)、④解除の請求(民法541条)の行使を妨げないとされていますので、これらを検討します。

まず、③損害賠償請求に関しては、雨漏りにより室内の備品が損傷したことによる損害の賠償請求をすることは可能ですが、雨漏りの修補を他社に依頼した場合の工事代金を損害として請求する場合には注意が必要です。

雨漏りの修補を他社に依頼した場合の工事代金を損害金として請求するということは、つまり「債務の履行に代わる損害賠償の請求」(民法415条2項)にあたりますから、請負人が雨漏りの修理を明確に拒絶していない限り、請求することはできません。

結局は、②代金減額請求とほぼパラレルに考えることになります。つまり、改正後民法では、請負人(ハウスメーカー等)に対して、修補ではなく損害金を支払うよう請求することはできなくなります。

④解除の請求に関しては、旧民法では建物の請負契約においては解除は法律で認められていませんでした(ただし、判例により、目的物に重大な瑕疵があり、立て替えざるを得ないような場合には解釈上認められていました)。

しかし、改正後も、「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」(民法541条但書)には解除ができないこととなっていますので、今後の裁判例によりますが、大きくは変わらないと思われます。

これらの請求に期間の制限はあるのでしょうか。民法だけでなく、特約にも注意が必要です。

まず、民法637条1項で、「注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、」「注文者は、その不適合を理由として、①履行の追完の請求、②報酬の減額の請求、③損害賠償の請求及び④契約の解除をすることができない」とされています。

今回の改正により、「通知」することを起点として請求期間の制限がされることになりましたので、注文者は欠陥を把握した場合には、まず、「通知」をするということをしなければなりません。

法律上は、「不適合」を通知すれば足りるので、「不適合」の通知とは別に、①履行の追完の請求をしてもよいのですが、実務的には、配達証明付き内容証明にて、不適合部分を特定して、①履行の追完の請求(場合によってはそれに付随する損害賠償の請求を含む)の通知をすることが多いでしょう。

なお、不適合を「通知」したとしても、不適合を知った日から5年が経過したり、権利行使可能な時(通常は引渡し時)から10年経過した場合には、時効によって消滅します(民法166条)。

ただし、特約にも注意しなければなりません。ご紹介した民法の規定はあくまでも、任意規定とされているので、特約により別の定めが可能です。

例えば、一般的な住宅工事の契約に使用することを前提に作成された国土交通省の民間建設工事標準請負契約約款(乙)では、民法637条1項の規定は排除され(第35条7項)、同条第1項で「契約不適合を理由とした履行の追完の請求、損害賠償の請求、代金の減額の請求又は契約の解除」は「引渡しを受けた日から2年以内」に制限され、一部の不適合に関しては同条2項でさらに期間の制限されています。

特約により、民法の定めよりも大幅に、期間制限がされていることが多いのです。

新築の場合には、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の適用により救済される場合があります。

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)により、新築する建設工事の不適合のうち「住宅の構造耐力上主要な部分等」に関しては、救済規定があります。

この場合には、引渡しから10年の間、「履行の追完の請求、損害賠償の請求、代金の減額の請求又は契約の解除」が可能とされています。この規定は、強行法規であるため(品確法94条2項)、特約の有無にかかわらず、品確法の適用があります。

改正民法第415条(債務不履行による損害賠償)

1 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

① 債務の履行が不能であるとき。

② 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

③ 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。


改正民法第540条(解除権の行使)

1 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。

2 前項の意思表示は、撤回することができない。


改正民法第541条(解除権の行使)

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。


改正民法第559条(有償契約への準用)

この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。


改正民法第562条(買主の追完請求権)

1 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。


改正民法第563条(買主の代金減額請求権)

1 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

① 履行の追完が不能であるとき。

② 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。

③ 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。

④ 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。


改正民法第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)

前二条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。


改正民法第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。


改正民法第636条(請負人の担保責任の制限)

請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。


改正民法第637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

1 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

2 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。

国土交通省の民間建設工事標準請負契約約款(乙)
第35条(契約不適合責任期間等)

1 発注者は、引き渡された工事目的物に関し、第十八条第二項に規定する引渡し(以下この条において単に「引渡し」という。)を受けた日から2年以内でなければ、契約不適合を理由とした履行の追完の請求、損害賠償の請求、代金の減額の請求又は契約の解除(以下この条において「請求等」という。)をすることができない。

2 前項の規定にかかわらず、建築設備の機器本体、室内の仕上げ・装飾、家具、植栽等の契約不適合については、引渡しの時、発注者が検査して直ちにその履行の追完を請求しなければ、受注者は、その責任を負わない。ただし、当該検査において一般的な注意の下で発見できなかった契約不適合については、引渡しを受けた日から一年が経過する日まで請求等をすることができる。

3 前2項の請求等は、具体的な契約不適合の内容、請求する損害額の算定の根拠等当該請求等の根拠を示して、受注者の契約不適合責任を問う意思を明確に告げることで行う。

4 発注者が第1項又は第2項に規定する契約不適合に係る請求等が可能な期間(以下この項及び第7項において「契約不適合責任期間」という。)の内に契約不適合を知り、その旨を受注者に通知した場合において、発注者が通知から1年が経過する日までに前項に規定する方法による請求等をしたときは、契約不適合責任期間の内に請求等をしたものとみなす。

5 発注者は、第1項又は第2項の請求等を行ったときは、当該請求等の根拠となる契約不適合に関し、民法の消滅時効の範囲で、当該請求等以外に必要と認められる請求等をすることができる。

6 前各項の規定は、契約不適合が受注者の故意又は重過失により生じたものであるときには適用せず、契約不適合に関する受注者の責任については、民法の定めるところによる。

7 民法第637条第1項の規定は、契約不適合責任期間については適用しない。

8 この契約が、住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第九十四条第一項に規定する住宅新築請負契約である場合には、工事目的物のうち住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令(平成十二年政令第六十四号)第5条に定める部分の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。)について請求等を行うことのできる期間は、10年とする。この場合において、前各項の規定は適用しない。

9 引き渡された工事目的物の契約不適合が支給材料の性質又は発注者若しくは監理者の指図により生じたものであるときは、発注者は当該契約不適合を理由として、請求等をすることができない。ただし、受注者がその材料又は指図の不適当であることを知りながらこれを通知しなかったときは、この限りでない

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)
第94条(住宅の新築工事の請負人の瑕疵担保責任)

1 住宅を新築する建設工事の請負契約(以下「住宅新築請負契約」という。)においては、請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(次条において「住宅の構造耐力上主要な部分等」という。)の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。次条において同じ。)について、民法(明治二十九年法律第八十九号)第415条、第541条及び第542条並びに同法第559条において準用する同法第562条及び第563条に規定する担保の責任を負う。

2 前項の規定に反する特約で注文者に不利なものは、無効とする。

3 第1項の場合における民法第637条の規定の適用については、同条第1項中「前条本文に規定する」とあるのは「請負人が住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第九十四条第一項に規定する瑕疵がある目的物を注文者に引き渡した」と、同項及び同条第2項中「不適合」とあるのは「瑕疵」とする。

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