【相続】相続法の改正について教えてください②

平成31年7月1日施行民法1028条から1029条「配偶者居住権の取得」

相続法の改正では、配偶者居住権に関する条文が新設されました。

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始時(被相続人の死亡時点で)居住していた場合に、その建物全部につき無償で使用・収益する権利をいいます。

では、どのような場合に配偶者居住権を取得することになるのでしょうか。

一番目は、遺言による遺贈や遺産分割方法の指定、共同相続人間の遺産分割において配偶者居住権を取得するとされた場合です(民法1028条第1項)。

二番目は、家庭裁判所の審判により取得する場合です(民法1029条)。具体的には、共同相続人間での合意が成立しているとき、配偶者が配偶者居住権の取得を希望を申し出た場合において、居住所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があるときの2つが条文上挙げられています。

改正民法第1028条

1 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。

 一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。

 二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。

3 第903条第4項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

改正民法第1029条

遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。

 一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。

 二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。

平成31年7月1日施行民法1030条から1032条「配偶者居住権の存続期間等」

配偶者居住権は、原則として存続期間が「終身」と定められました。ただし、遺産分割の協議、遺言、裁判所の審判において、別の定めがある場合には、その定める期間となることになりました(民法1030条)。

配偶者居住権を取得した場合には、建物所有者に対して、登記を備えさせることができ、登記が第三者対抗要件となりました。通常の建物の賃借権の場合には、賃借人の占有が第三者対抗要件されていますが、配偶者居住権では、登記のみが第三者対抗要件とされています(民法1031条)。

相続開始後に配偶者居住権の対象となる不動産が競売にかけられた場合には、競売手続きにおける差押えと配偶者居住権の登記の先後によって、結論が変わることになります。

配偶者居住権の権利者は、所有者の許可を得なければ建物の改築、増築、第三者に使用・収益させることはできないとされ(民法1032条第3項)、違反した場合には、所有者が相当期間内に是正の催告をし、相当期間内な是正されない場合には、意思表示によって消滅させることができることとされました(民法1032条第4項)。

改正民法第1030条

配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。

改正民法第1030条

居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。

改正民法第1031条

1 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。

2 配偶者居住権は、譲渡することができない。

3 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。

4 配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。

平成31年7月1日施行民法1037条「配偶者短期居住権」

配偶者短期居住権とは、被相続人の配偶者が、相続開始の時に被相続人の財産に帰属した建物に居住する場合には、相続又は遺贈により同定物を取得した者に対し、同定物を無償で使用する権利をいいます。

配偶者短期居住権は、配偶者居住権とは異なり、相続開始の日から遺産分割までの間(又は相続開始の時から6か月)の暫定的な居住権です。

存続期間に関しては、居住建物について「配偶者を含む」共同相続人が遺産分割をすべき場合に関しては、遺産分割により建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月のいずれか遅い日とされました。これにより、遺言等により、相続発生の際の建物の帰属が確定している場合でも、6か月の期間は猶予期間が生じることになりました。

一方、配偶者が相続放棄をしたり、遺言により遺贈等が行われ、配偶者が居住建物について相続分がないこととされた場合には、居住建物の所有者からの配偶者短期居住権の消滅の申し入れの日から6か月の経過により、配偶者短期居住権が消滅することとされました。

改正民法第1037条

1 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。

 一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日

 二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日

2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。

3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。