【交通事故】交通事故の休業損害の補償に関して教えてください。

交通事故により休業をした場合には「休業損害」を請求することができます。

交通事故により、傷害を負い、会社等を休まざるを得なくなり、休業が発生することがあります。

例えば、事故によりむち打ち症となり、1週間の安静を要すると医師に判断された場合等がこれに当たります。

この期間、会社で休みを取り給与が減額された場合には、この減額分が「休業損害」となります。

「休業損害」は、過去3カ月の実績から1日当たりの給与額を算出して計算します。

「休業損害」は、会社発行の休業損害証明書と源泉徴収票を証拠資料とし、過去3カ月の実績から1日当たりの給与額を算出するのが一般的です。

過去3か月分の「総支給額」(社会保険料や源泉徴収等の控除前のものです)を足し合わせ、過去3か月の「稼働日数」で割り付けるという方法を取ります。

この点については、「稼働日数」ではなく、「総日数」をもって計算すべきという考え方もあり、これに沿う裁判例もあります。

保険会社によっては、「総日数」で主張することもありますので、注意をする必要があります。

有休を取得したとしても「休業損害」の請求が可能です。

短い期間の休業の場合には、年次有給休暇を取得することで対応する場合もあります。

年次有給休暇を取得したとしても、「休業損害」の請求は可能です。

計算方法も、休業した場合と同様に、過去3か月の実績から1日当たりの給与額を算出します。

専業主婦やパート勤務の主婦の方も請求が可能です。

家庭内での家事労働に従事している専業主婦やパート勤務の主婦の方も休業損害を請求することが可能です。

請求のベースとなる収入は「賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額」となり、年額381万9200円(令和2年度のデータ)、日額1万0464円となります。

計算方法は、①通院日について一定割合の家事労働能力を喪失したと計算する方法(ex.通院日数●日×日額1万0464円×●%(通院1日当たり●%の家事労働能力を喪失))、②症状や通院により治療期間全体を通じて一定割合での家事労働能力を喪失が生じたと計算する方法(治療期間●日×日額1万0464円×●%(ex.通院期間を通じて●%の家事労働能力を喪失))、③治療期間をいくつかに区切り計算する方法(ex.ギブス固定期間や入院期間は100%の家事労働能力喪失、その後●か月は●%喪失、・・・)。

次のような「思わぬ」落とし穴もありますので、注意が必要です。

会社発行の休業損害証明書を利用することが通例ですから、会社を退職する予定がある場合には、念のため退職前に書いてもらう方が良いと思われます。

弁護士個人の経験として、会社が倒産し、給与明細が残っていなかったため、証明が困難となるケースに遭遇したことがあります。

また、会社にも休業の際には、交通事故が原因であることを伝えておいた方が良いです。

関係性にもよりますが、会社によっては、後になり、交通事故が原因か不明であるので、発行できないと対応するケースもまれに見受けられます。

他のケースとしては、自己判断で長期休業し、後に保険会社から否認されるケースも存在します。

「休業の必要性」の判断は、あくまで仕事の内容と症状の性質・程度との兼ね合いですが、医師に相談の上で、場合によって診断書の発行も受けた方が方が良いケースもあります。

個人事業主や会社の役員の場合には、別途考慮する必要があります。

個人事業主については、過去の確定申告の資料から休業期間中の1日当たりの所得を算出して損害を請求することが多いです。

事業者の場合には、営業損などの問題も関係するため、弁護士に相談することをお勧めします。

次に、会社の取締役等の役員の場合には、事態はさらに複雑です。

取締役の報酬が減額されており、それが労務提供の対価部分の場合には、その減額分が休業損害となりえます。

一方、減額がない場合には、取締役個人からの休業損害の請求はできないのが原則です。

減収がないケース(会社から役員報酬が満額支払われたケース)では、さらに、会社から加害者への取締役の休業に伴う損害を請求することができないかが問題となります。

会社が支払った役員報酬のうち「役員報酬の労務提供の対価部分」については、会社が肩代わりしたこと、労務という利益を享受していないにもかかわらず会社が支払った報酬であること、損害賠償法の根本理念から請求が可能であることを理由として、請求を認める裁判例があります(認容例:東京地方裁判所昭和61年5月27日、東京地方裁判所平成7年12月20日、横浜地方裁判所平成24年12月20日)。ただし、役員が勤務できないことによる外注費の増加等の営業損失は「間接損害理論」により、役員が会社と経済的に一体でない限り認められない等、理論的に複雑であるため、弁護士へのご相談をお勧めします。

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