【相続】相続・遺産分割には期限がありますので、注意が必要です。(令和5年4月1日施行民法、令和6年4月1日施行不動産登記法)

近年の改正で、遺産分割・相続の期限が増えています。

相続・遺産分割手続きにまつわる期限が近年増えており、気を付ける必要が出てきています。

遺留分減殺請求や相続税申告がその典型ですが、それ以外にも近年の法改正で、増加した期限が存在します。

施行前の法令もありますが、一括して解説します。

相続の放棄の申述(3か月)

相続人の相続の放棄の申述は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に放棄の申述をする必要があります(民法第915条第1項)。

なお、この期間は裁判所に申し立てをすることで伸長することができ、実務的には3か月の期間伸長が認められることが多いです。

準確定申告(4か月)

相続人は、1月1日から相続開始した日までの期間の確定申告を、「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」に行う必要があります(所得税法第125条)。

特に、個人事業主等の場合には注意が必要です。

特別寄与料の請求(6か月、令和元年7月1日施行)。

相続人以外の「被相続人の親族」が「無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」場合に請求できる特別寄与分というものがあります(民法第1050条)。

特別寄与分は、相続分に応じて各相続人が負担するため、請求者は、「相続人全員」に対して、個別に「特別の寄与に関する処分調停」ないし「審判」の請求をする必要があります。調停前置主義は採用されていないので、審判をはじめから起こすことも可能です。

この請求には期限があり、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したとき」には、請求できないこととされています。

最高裁令和3年7月26日判決で「相続人を知った時」と規定している理由は、相続開始を知ったものの相続人の存在が覚知出来なかった場合や特別寄与料の請求をしていた相続人が請求者に知らずに放棄していた場合に、除籍期間が経過しないようにした趣旨とされています。

特別寄与分を請求するには、寄与分と同様に、療養監護型であれば、療養看護の必要性、特別な貢献、無償性、継続性、専従性が考慮されるとされており、ハードルは高いです。

なお、この制度では、相続放棄したものも特別寄与料の請求をできることとなっていますので、適用例は少ないかと思いますが、注意が必要です。

相続税申告(10か月)

相続税の申告は、「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10月以内」に行うことになっています(相続税法第21条の18)。

相続税が発生し得る相続が発生した場合には、早急に財産資料を取りまとめ、税理士の先生に相談する等の申告の準備をする必要があります。

なお、遺産分割が10か月までにまとまらなかったとしても、未分割であることを前提に(「期限後3年以内の分割見込書」を提出)、申告をすることが可能ですので、分割未了は相続税申告の期限に影響を与えません。

遺留分侵害額請求(1年、令和元年7月1日施行)

「兄弟姉妹以外の相続人」は、遺産の最低限の取り分である遺留分を侵害する贈与や遺贈(特定財産承継遺言、相続分の指定遺言を含む。)に対して、遺留分侵害請求をすることができます(民法第1046条)。

民法第1048条では、遺留分侵害額請求について、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と規定しています。

遺言に対して遺留分侵害請求をする場合には、相続の開始及び遺言を知った時となります。一方、生前から贈与があったことを知っていた場合には、相続の開始から1年となるため、時間的な猶予がシビアになりがちです。

遺留分侵害額の請求の詳細は、【相続】遺留分減殺請求とは何ですか(2019年7月1日施行相続法改正対応)をご参照ください。

相続登記申請義務(3年・令和6年4月1日施行)

改正不動産登記法第76条の2「所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。」との規定が新設されました。

被相続人が不動産を保有している場合、相続の開始により原則として不動産は各相続人の遺産共有状態となりますから、相続登記申請義務があることとなります。

ただし、相続人登記の制度は「相続人申告登記」の新設により、簡易化され、法定相続人の範囲や法定相続の割合を確定する必要はなく、単に申出をする者が被相続人の相続人であることを申し出れば良いこととされました(改正同法76条の3)。

なお、この改正には経過措置があり、施行前に相続が開始し、相続により所有権を取得したことを知っていたケースにも適用があります。

この場合には、施行から3年以内に登記をする必要があります(改正同法付則第5条第6項)。

更正の請求(5年10か月又は事由から4か月or2か月)

相続人が相続税を支払いすぎた場合の更正の請求による還付は、国税通則法第23条1項により、「法定申告期限から5年以内」つまり、相続の開始から5年10か月以内にしなければなりません。

ただし、相続税法第32条第1項各号及び国税通則法第23条2項など特例が定められており、同法では、遺産分割や遺留分侵害額の請求の確定等の後発的な事由が生じたことによる更正の請求は事由の発生から「4か月又は2か月」とされています。配偶者の税額の軽減や小規模宅地の特例との関係によりさらに複雑となるので、税理士にご相談されることをお勧めします。

遺産分割における寄与分・特別受益(10年・令和5年4月1日施行)

令和5年4月1日施行の民法改正で、相続開始のときから10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分(又は指定相続分)によることとなりました。

具体的には、「相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については」、寄与分・特別受益は主張できないということになりました(改正民法904条の3)。

したがって、寄与分・特別受益の主張がある場合には、特に相続の開始から10年を経過する前に遺産分割の調停を申立てする必要があります。

なお、この改正には経過措置があり、施行前に相続が開始したケースにも適用があります(改正同法付則第3条)。

①施行時点ですでに相続開始から10年が経過している場合は「施行から5年の経過」で、②施行時点では相続開始から10年は経過していないが施行後5年以内に10年が経過する場合には、「施行から5年の経過」で、寄与分・特別受益は主張できないことになります。

③相続開始から10年経過する時が、施行から5年経過するときよりも遅いケースでは、寄与分・特別受益は主張できないことになります。

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